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自然を知ることが、森を守るうえで最も大切になります。
単純に1本の木を観察するだけでは、その場所の環境を知ることは出来ません。周辺にどのような植物や木々があるのか。
​土はどのような成分で構成されているか。酸性かアルカリ性か。水源はあるか。風や日差しを遮るものがあるか。
​自然や環境を良く観察しなくてはなりません。
自然を知り置かれた状況や環境の中で、最も効果のある方法を選択していくことで、その土地で暮らす人々にとってより良い方法での自然との付き合い方を伝えていくことができます。
そのためには、まずその森林のみならず、その土地の動植物、地質、土地柄や国民性に至るまで、知ることから始めなければなりません。

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樹木も含め植物は、光合成により二酸化炭素を吸収し酸素を放出する一方で、生きていくための呼吸もしており、酸素を吸収し二酸化炭素を放出しています。
ただし、光合成に使われる二酸化炭素量は呼吸から出る二酸化炭素量よりも多いため、差し引きすると樹木は二酸化炭素を吸収していることになります。
成長期の若い森林では、樹木は二酸化炭素をどんどん吸収して大きくなりますが、成熟した森林は、吸収量に対する呼吸量がだんだん多くなり、差し引きの吸収能力は低下していきます。
​また、下草もまた、木々と同じようにトータルするとかなりの酸素を出すことが判っています。​
下草を刈ることが、商業林では必須になりますが、天然林は他の動植物の生態系を維持します。
但し、外来種やその土地に本来無かった植物が入ってくると、生態系は当然変化することになります。
​ツルやツタなどの植物は、成長力も早く丈夫であることが多いため、日陰を作ってしまい、他の植物を枯らせることが多く問題となります。

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朽ちた木々は数十年という長い年月を経て土へと戻って行きます。
森に入ったことはみなさんあるかと思いますが、切り株や台風や落雷などによって倒れた倒木は天然林には至る所にあります。
こうした木々は光合成をしないばかりでなく、朽ちていく過程で発酵し二酸化炭素を発生させます。
南半球では、高温多湿であるため、木々の朽ちるスピードは北半球に比べると早くなります。

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商業林とは建築資材や家具など私たちの生活に必要な木材を育て、数十年という長い年月を経て伐採され市場へ出荷されます。
​今植林を行った木はわたしたち自身の世代で切ることはなく、子や孫の世代が伐採し植林することで長期的に森林を守っていけます。
対して天然林は、木々や植物が天然の状態で残されている森林になります。
この2つの最も大きな違いは木を植える密度にあります。

商業林は植林の段階で1ヘクタールあたり、2000本から3000本の苗木が植えられます。
成長するまでの数十年の間に間伐を行い最終的には600本~800本程度まで減ります。
天然林は、種子が落下し成長した木が育つため植林した森林よりも密度は薄くなります。
しかし商業林では見られない、木の横に木が生えるなど不規則ではありますが、若木や生育不十分な木々も多く生えるという一面もあります。

下の写真を見ていただくと判るかと思いますが、左が商業林で右が天然林になります。
右の天然林は木々の生育がまばらなのに対し、左の商業林は等間隔に植えられ大体生育も同じです。
これは将来的に行う間伐や出荷時期などを合わせる上でも、同じ時期に植林を行い等間隔で植えることでコスト削減をすることができます。
しかし森林で暮らす動植物の生態系は大きく崩れるため、絶滅危惧種など知らず知らずのうちに伐採されてしまうなどの危険性があります。

対して天然林は育った時期が別々であったり、強い木が生き残って行くなど主導権は人間ではなく自然界が握っています。
​また自然界は木だけでなく、あらゆる動植物の生態系を壊さぬよう注意を払いたいと思っています。

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下記のグラフは家庭からの二酸化炭素の排出量になります。燃料種別で見ると、電力、ガソリンが多く、ガソリンは自家用車で利用され、
電力は、テレビや冷蔵庫など、主に電化製品や電車や工場などで使用されています。
電力はお金さえ払えば供給されますが、その裏で地球温暖化での一番大きな原因となっています。
国土の70%が森林である日本がCO2の削減に苦しんでいることを考えると、CO2削減に何が必要なのかは言うまでもありません。
​森林を守ることも大切ですが、日々使用する電力を極力抑えることが一番の近道であると言えます。
またグラフに記載はありませんが、我々が使用する、様々な生活用品や車といったものが生産される過程で出る二酸化炭素はかなりの量となります。
​簡単に物を捨てたり、買い替えたりする今の日本のライフスタイルは、多くのCO2を排出していることは間違いありません。

地球の番人では、植林によるCO2削減は一定の効果以上は得られないと考えており、付加効果だと考えています。
​既にわたしたち人間が増えすぎてしまったために、生活で使用する電力やガソリンの使用量が地球の許容範囲を超えた結果です。
また人間が木材を含めた資源を採取し環境が損なわれてい行くことで、地球に与える影響は地球温暖化だけではないはずです。
地震であるかもしれませんし、多く起こる台風かもしれません。それはこれから科学的に解明されるのを待つほかありません。
地球の番人では、長く地球がそうであったように、天然林を多く残し世代から世代へと健康な地球を受け渡していく手助けをしたいと考えています。

出典:国立環境研究所ウェブサイト

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◆スギの40年生の人工林がこれまでに吸収してきた量(40年分)と1年間に吸収する量

 

樹木が吸収し蓄積する二酸化炭素の量は一本一本異なっています。例えば、適切に手入れされている40年生の スギ人工林は1ヘクタール当たり約79トンの炭素(二酸化炭素に換算すると約290トン注1)を蓄えていると推定されます。また、この40年生前後のスギ人工林1ヘクタールが1年間に吸収する二酸化炭素の量は、約8.8トン(炭素量に換算すると約2.3トン)と推定されます。 

◆スギの吸収量と身近な二酸化炭素排出量の比較

 1世帯から1年間に排出される二酸化炭素の量は、2012年の場合、5,270キログラム(注2)でした。 これは、40年生のスギ約18本(注3)が蓄えている量と同じぐらいです。また、この排出量を、40年生のスギが1年間で吸収する量に換算した場合、スギ599本分(注3)の吸収量と同じぐらいということになります 。

 

    注1    炭素量に44/12を掛けると、二酸化炭素量となります。

    注2    出典:温室効果ガスインベントリオフィスウェブページ

    注3    40年生のスギ人工林、1ヘクタールに1,000本の立木があると仮定した場合。

  注4  出典:林野庁 http://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/con_5.html#q1

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人が生きていくためには、森林は欠かせない存在です。住む家に使う木材、家具を作る木材、割箸や紙に至るまで多くの木を使用しています。これは日本に限らず世界共通であり、暮らしと切って離すことはできません。
例えば、高床式の小さな家は少ない木材で建てることができますが、一度便利な家やマンションンに住んでしまっている私たちが、高床式の家に住むのは誰も望まないでしょう。
家を建てる時に、極力費用を抑えるために、安い建材を多く使用します。
これらは再利用されることなく、建て替えの際には捨てられたり、燃やされたりしていきます。
家具も同様、現在の家具は安価にするため、長い年月利用する耐久性が無い商品を多くみかけます。
​消費者のニーズですが、安ければ良いという考え方を改める必要性があります。

日々家と会社の往復する間で、誰も森林のことは考えません。時折流れるニュースを見た時、大変だと思うのも自身がその環境に置かれていないため、当事者という感覚もなく人ごとのようになってしまうのが現状だと思います。しかし、いずれその代償を払う日はきます。
 
森林を守っていくためには、私たちの生活に必要な木を確保しつつ、天然林を如何に残していくかというのが課題になります。
産業が無い小さな村では、どうしても自然に依存しなければならない生活の現状があります。
煮炊きに使う薪、機械などがないために労働力や手間を省くために行う焼畑、現金収入を得るために植える果樹や建築資材用の木々、どれだけ自然が大切であっても、人が生きていくためにはこれらは必要になります。
​様々な用途の森林を管理する術を伝えていくことが、人と自然保護を両立させていくことに繋がります。

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レッドリストは、国際自然保護連合(The IUCN Red List of Threatened Species)が作成した絶滅の恐れがある動植物のリストで、日本でも地方公共団体やNGOが国内向けに作成しています。
しかし日本のレッドリストは始まってから日が浅く、森林業界も含め浸透していない実情があります。
先にも記載しましたが、植林を行う際に植物を1つずつ確認するのは困難であり、知らず知らずのうちに下草刈りなどで伐採されてしまっている可能性が極めて高いと言えます。

他国での植林となると、植物に対する知識は更に希薄になります。
こうした植物を保全しつつ植林を行わなければ生態系そのものを崩してしまうことにもなりかねません。

人間が増えすぎてしまった社会の中では、意識して絶滅危惧種の保全に努めなければ後世に残すことは不可能です。​
​また、今後こうした植物が医療やその他わたしたちの生活において、役立つ可能性も否定できませんし、
​これらの動植物もまた、わたしたちと同じように地球上で生きているのです。​
環境省レッドリスト2017 http://www.env.go.jp/press/files/jp/105449.pdf

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海外で植林を行う際、その土地その土地で抱えている問題や課題があり、それらが密接に植林に関わっていると感じました。
村人や現地スタッフなどからのリクエストも、こうした村の事情を反映しているものが多く、また天然林を残していくうえでもこれらの課題はクリアする必要がありました。

天然の森林と、生活のために伐採する森林に分けることが必要だと私たちは考えました。
そのため、独自の手法でこれらの森林を管理しています。
植林を行うだけでなく、様々な植物群を管理することで、森林だけでなく自然環境をなるべく元の天然林へと戻す手法を取っています。
そして、これらの植林地を守るためには、生活に必要な木材を確保する森林と、それを運用するシステムや技術が必要となります。
地球の番人では各村にスタッフを配置し、村人に対しこれらの技術やシステムの運用を教育し、生活用の森林に対する植林も並行して行い運用することで、天然林を守るシステムを構築し、村毎に抱える問題にも柔軟に対応していける環境を作っています。

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地球の番人では上記で述べたような独自の手法で植林を行っています。
国外へ出てただ多くの木々を植えるのでは意味がありません。
地球温暖化のための植林が叫ばれていますが、地球温暖化で最も効果のある解決策は植林ではありません。
わたしたちが生活のために使用する電力であり、車や発電のために使用するガソリンが最も大きな比重を占めており、木々の減少はそれらの1原因に過ぎないのです。
わたしたちは地球から木に限らず多くの資源を生活のために採取していますが、これは無限に続けることができるものではありません。
いずれ資源が尽きる日がきますし、いやがおうにも暮らしを改めなくてはならない日がくるでしょう。
それはわたしたちの子供や孫の世代かもしれませんし、もっと先になるかもしれません。
そうしたことが起こらなくて済むよう、わたしたちは地球の番人として世代から世代へと地球の番人を受け渡すことで見守り続けます。

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